平成27年度年度訓示要旨
皆さん、おはようございます。
去る2月17日、知事に就任して以来、1か月半が過ぎました。
この間、2月議会対応をはじめ、公約実現に向けた施策の検討などに、皆さんと一緒に取り組ませていただきました。
就任直後の慌ただしい中ではありましたが、皆さんのご協力により、スムーズに船出ができましたことに、まずお礼を申し上げたいと思います。
さて、この時期は、恒例ではありますが、出会いと別れの季節であります。
去る3月31日、91名の退職者をお送りいたしました。
退職された皆様は、激動の社会経済情勢の中にあって、懸命に県政を支えてこられた皆様であります。
その御労苦に対しまして、心から感謝申し上げるとともに、今後の御健勝と、県庁で培った経験を生かして、地域社会で益々御活躍されますことをお祈りしたいと思います。
代わって、4月1日には、新たに101名の溌剌とした職員を迎えました。
意欲をもって県職員という道を選ばれた皆さんには、県民の奉仕者であるという自覚とともに、自らの手で本県の未来を創造していくという気概を持って、若い力を存分に発揮していただくことを期待いたします。
上司となる皆さんには、若い職員たちを、県民の良き奉仕者として、立派な公務員になるよう、しっかりと育てていくことが、重要な責務であることを認識してください。
本年度の課題
さて、本年度は、「ダイナミックやまなし」の実現に向けて、確かな1歩を踏み出す非常に重要な年度であります。
新年度のスタートに当たり、私の想いや決意を改めて申し上げ、皆さんのご理解とご協力を得たいと思います。
就任時にも申し上げましたように、今日の山梨は、人口減少・少子高齢化というかつて経験したことのない大きな変化をはじめ、大規模な自然災害への備えなど、いくつかの大きな転機に直面しております。
私は、こうした変化をむしろ好機と捉え、地域の持つ力を最大限に活かす発想を持つことが極めて重要であると考えています。
そして、閉塞感に覆われている山梨の現状をダイナミックに変革していくことで、プラチナのごとく将来にわたり持続的かつ安定的に輝き続ける地域づくりを進めていかなければならないと改めて感じています。
このため、県民の皆様とお約束した117の公約を1日も早く具体化し、本県の大いなる発展に向けた施策を積極的に展開していくことが、私に課せられた責務であります。
私は、過去百年の本県の歴史を踏まえた特性と、直面する課題を踏まえ、6つの方向で施策に取り組みたいと思います。
1つ目は、本県の雇用と経済を支える基幹産業の発展であります。
本県が有する地域資源を最大限に活用し、安価で安定的な電力供給を確保し、企業の立地拠点としての魅力を高め、本県が有する特長を活かした新産業を創出します。
東西をつなぐ中央自動車道は、3月中旬に調布付近と小仏トンネル付近の具体的な渋滞緩和対策が示され、ボトルネックの解消が大いに期待されます。これに、中部横断自動車道という南北を結ぶ新たな幹線が加わることで飛躍的に向上する高速道路環境を活かした企業誘致に積極的に取り組み、将来にわたり山梨を支えていく基幹産業の裾野を拡大してまいります。
更に、基幹産業の成長・発展を支える即戦力となる人材を供給するため、県立高等専門学校など新たな教育機関の設置を推進します。
2つ目は、農林業、地場産業、観光など地域資源を生かして個性豊かな産業を生み出すことであります。
本県が有する豊かな森林資源については、県産材の需要拡大を図り、林業の6次産業化を進めるなど、多面的な利活用システムを構築します。
農業については、自然エネルギー等の積極的な利活用を促進することにより、経営コスト縮減による収益性の向上や、果実をはじめとする県産農産物の高品質化と新商品の開発等を図るとともに、アジアへの「山梨モール」設置など、海外に販路を積極的に拡大し、県産農産物の需要拡大に向けた戦略的な取り組みを推進します。
また、栽培技術やマーケティングなどに幅広く対応できる「農援隊」を設立し、6次産業化の取り組みを支援し、儲かる農業を展開します。
更に、全国有数の果樹農業から生み出される魅力的な桃源郷の景観について、世界農業遺産への認定を目指す取り組みを進めるとともに、世界遺産・富士山や南アルプス・ユネスコエコパークなど県内各地の魅力豊かな地域資源との連携を図り、統一的なプロモーションを展開することで、県内周遊観光を推進し、滞在型の観光地づくりを進めます。
3つ目は、少子化が進行する中、明日の山梨を担う人材を育成する教育体制、子育てを支援する体制の充実であります。
地域を支える人材を育成することが必要不可欠であることから、学校教育において主体的な学びを中心とした教育環境を確保するとともに、誰もが子どもを産み育てたいと感じることができる子育て環境を整備していくことが重要であります。
このため、次代の山梨を担う子どもたちの学力を伸ばし、個性と創造性を育む新たな学校づくりに向け、地域と学校が一体となった主体的な取り組みを積極的に支援し、また、児童生徒へのきめ細やかな指導を行うため、少人数学級を基礎とした少人数教育の一層の充実を図るとともに、高校教育において、生徒の個性や関心に応えられる多様な学びの選択肢を提供して参ります。
子育てについては、行政と地域社会、企業が一体となり、子どもと子育てを支援する「子育て協働社会」を構築し、加えて、若い世代が子育てに抱く最大の不安のひとつである経済的負担を和らげるため、妊娠・出産から中学校までの子育てにかかる経費の軽減策を講じて参ります。
また、総合球技場等の県有スポーツ施設の計画的な整備と、海外とのスポーツ交流などに取り組むとともに、県内の芸術文化活動や各種イベントの連携強化と魅力向上を図り、国内外に広く情報発信をしていきます。
4つ目は、生涯にわたって心身とも健康に、生き生きと暮らすことができる地域づくりであります。
人生90年時代を迎え、健康で生き生きと暮らしていくため、生涯にわたり学び直しができる環境の整備や、仕事を提供し、多様性ある社会の形成が必要であります。
また、介護予防事業の充実や地域医療の強化などを総合的に推進し、医師や看護師の地域偏在など医療を巡る課題の解決や、重粒子線治療など先端医療の導入等を図ることにより、県内全体としての医療提供体制を充実強化して参ります。
更に、リニア中央新幹線の新駅周辺地区に、木造集合住宅や多様な商業施設を集積させ、自立型エネルギーを備えた「リニア環境未来都市」を形成し、リニアを活用した首都圏・中部圏への通勤者の増加を図るなど、景観づくりや環境保全の取り組みも推進し、魅力豊かで最良の生活環境を目指して参ります。
5つ目は、自然災害の多発やインフラの老朽化、公共交通や商店街の衰退等が進行する中で、地域の暮らしと企業活動を守ることであります。
県民に生涯にわたり安心して暮らすことができる社会を提供するためには、平常時のみならず災害発生時にも企業活動や日常生活を維持できる社会インフラを整備することが重要です。
このため、災害時に命の道となる幹線道路ネットワークの整備と老朽化が進む社会インフラの計画的な補修等を着実に進めるとともに、発生が懸念される大規模地震に加え、土砂災害や大雪などによる災害に備え、防災体制の整備と事前防災・減災等の取り組みを進め、強靱な県土をつくって参ります。
また、大規模災害発生に備え、県境を越えた避難や協力・応援体制を構築します。
6つ目は、地域課題を解決し、元気な山梨をつくるため、地域づくりのイノベーションを起こすということであります。
新たな地域社会の構築は、県が単独で進めるものではなく、市町村や産業界など、地域の多様な主体との連携を強化し、県民総参加により実現を図っていくことが重要です。
以上の6つはそれぞれ独立したものではなく、相互に関連しており、いま、強い意志をもって取り組んでいかなければ、本県は負のスパイラルに陥っていく可能性があります。
大手の上場企業は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでの成長路線の経営戦略に加えて、それ以後の景気を想定した経営戦略の検討を始めている企業が6割以上であります。
地方創生策を競争する時代にあって、東京オリンピックまでに我が県が成長への基盤を強化できなければ、熾烈な自治体間競争に勝ち抜くことはできません。このため、東京オリンピックまでが、本県が再生に向かうことができるか否かのデッドラインであると認識してください。
私は、それまでに数々の施策を実現していくためには、地域間、産業間などの連携強化が重要であると考えます。
県庁内における部局間の連携も欠かせません。県産ワインの振興を例に挙げると、産業労働部、農政部、観光部が個別に課題に取り組むのではなく、ワインのブランド力を高め、観光に活用して、ぶどうの生産増につなげていくなど、各部が戦略的に連携することが、それぞれの強みを発揮してウインウインの関係が構築できます。
公約実現に向けては、新しい課題や困難な課題への対応がありますが、独りよがりではなく、部局間はもちろん、国や市町村、地域や産業などとしっかりと連携して、施策を進めてください。
さて、今回、私にとって初めての人事を行いました。
2月17日の就任から、1か月余りという短い期間でありましたが、この間、懸案事項協議といった様々な機会を通じて、それぞれの能力、意欲、これまでの実績などを私なりにつかむことができました。その上で、適材を適所に配置する人事異動を行ったものであります。
その結果、部局長14名中11名を新任者とするとともに、女性職員をできる限り本庁課長や出先所長へ登用し、課長級以上の女性職員を昨年度の11名から18名へ増加させました。
また、防災危機管理体制の強化や、幹部職員の本庁と出先機関の交流配置による現場主義の一層の徹底、更には、事務職と技術職の交流などにも取り組み、チャレンジした人を評価いたしました。
職員の皆さんには、新しい施策・事業に更に積極的にチャレンジしてもらいたいと思います。
このため、これまで続けてきた県独自の給与カットは、4月以降、継続しないことといたしました。
県内経済がまだまだ厳しい中、県民から理解が得られるよう、私も含めて職員の皆さんには、これまで以上の仕事をして、県民の暮らし向上や本県経済の発展に尽くしてください。
新年度において、まずは、現在の予算が骨格予算であることから、6月県議会に向けて、政策予算を編成していかなければなりません。
また、この作業と合わせて、県政運営の大方針となる総合計画の策定も進めていかなければなりません。
早急に全庁体制を構築して、6月には暫定計画、年内にはグランドデザインとして将来の山梨の姿や、それを実現する具体的な施策を盛り込んだ総合計画を策定します。
職員の皆さんには、大変なご苦労をかけますが、県民生活の向上のため、私と共に歩みを進めてください。
職員に向けて
最後に職員の皆さんに改めてお願いしたいことが3点あります。
1点目は、仕事に対する姿勢として、何事に対しても、常にチャレンジ精神を持ち、不可能と諦めず、粘り強く取り組んでいただきたいということであります。
新しい事に取り組むことには、大変な労力が伴うものであります。しかし、避けていたのでは、何事も始まりません。皆さんには、やらない理由を考えるのではなく、どうすれば解決できるのかを前向きに工夫してもらいたいと思います。失敗を恐れず、ひるまず挑戦し続けてください。責任は知事である私が取ります。
2点目は、県庁職員の皆さんには、「鳥の目」のグローバルな視点を持ってもらいたいということであります。
新たな視点で施策を検討するには、時代の潮流を知り、広く情報を集めて、大所高所から物事を考えていく意識が大事であります。
併せて、仕事を進めるにおいては、現場を凝視する「虫の目」の視点も持っていただきたいと思います。
机上で考えているだけでは、実際のことは何もわかりません。現場に行き、物を見て、人に会うことによって、本当のことが見えてきます。皆さんには、どうか、自分の目で見て、話を聞いて、肌で感じたことを施策に反映してください。
3点目は、服務規律の確保であります。
服務規律の確保と適正な業務の執行については、歴代の知事も繰り返し発言してきたことでもあります。
県民の皆様は、県職員に対しては、一般人とは異なる厳しい目線を持っています。
このため、皆さんには、県民全体の奉仕者であるという自覚を常に忘れることなく、勤務中のみならず勤務時間外においても、社会的に批判を浴びるような行動は厳に慎むことを十分に心していただきたいと思います。
県政運営においては、県民との信頼関係が何よりも重要であることは言うまでもありません。
私も、常に高い倫理観に立ち、公正、公平で一党一派に偏しない政治姿勢を堅持するとともに、県民の皆様の信頼に応えて参る所存であります。
職員の皆さんも、県民の信頼こそ県政運営の基盤であることを、強く肝に銘じていただき、高い倫理観を持って、職務に邁進してください。
結び
私は、知事と県庁職員が総力を挙げて、100万人山梨の実現に向けて挑戦していくことが、県民を勇気づけ、一人一人のやる気と企業の活力を呼び起こし、明日の山梨を元気にするものであると確信しております。
たくさんの課題が山積しており、この1年は、非常に忙しくなると思いますが、自ら先頭に立って最大の汗をかき、躍動感ある山梨を創りたいと思いますので、職員の皆さんにも、大いに工夫を凝らし、知恵を出し、汗をかいていただき、私と共に一丸となって、オール山梨で「ダイナミックやまなし」を実現しようではありませんか。
最後に「任怨分謗」という言葉を皆様方に贈りしたいと思います。
私が昭和55年に農林省に入ったときの総理が大平総理でありました。総理が晩年、揮毫するときに、この4文字をよく書かれたということです。これは、いくつかの言葉の造語でありますけども、新しいことを始めるときには、誰もが諸手を挙げてその行動に賛同するものではない。時には激しく抵抗する勢力が生まれるかもしれない。いわれのない批判にさらされることもあるかもしれない。しかしチャレンジを厭う者は、こういった反応を示しがちだということ。大きな変革を目指し、新たな潮流を生むためには、こうした抵抗を恐れず、自らの志を貫く気概が必要であるという言葉であるようです。
私は、この四文字熟語が非常に好きです。是非皆さんにもこの言葉を共有していただきながら、新しい仕事に取り組んでいただきたいと思います。
皆さんには、皆さん自身の職務に誇りと自信を持ち、存分に活躍いただくことを心から期待し、私から皆様方への訓示といたします。
本年度、どうぞよろしくお願いいたします。
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